不動産投資 リスク【みんなで大家さん】年利7%の裏側に潜むリスクとは?集団提訴問題から学ぶ不動産投資の落とし穴
近年、不動産投資への関心が高まる中で、「みんなで大家さん」のような不動産ファンドが注目を集めてきました。年利7%という魅力的な利回りを謳い、多くの個人投資家から資金を集めていましたが、大規模開発プロジェクトの遅延や配当金の支払い停止など、問題が噴出。ついに投資家による集団提訴にまで発展する事態となりました。
なぜ、これほど大規模なファンドが機能不全に陥ってしまったのでしょうか? 年利7%という高利回りの裏には、どのようなリスクが潜んでいたのでしょうか? 今回は、不動産賃貸業と不動産投資教育事業を手掛け、YouTubeチャンネル『小原正徳の不動産アカデミー@YouTubeキャンパス』を運営する、総資産30億円の不動産投資家・小原正徳氏に、この問題の核心について聞いたこちらの記事を参考に読み解いてみます。
この記事では、小原氏へのインタビューを基に、「みんなで大家さん」の問題点を徹底的に分析。高利回りに隠された構造的なリスクや、投資家が注意すべきポイントをわかりやすく解説します。不動産投資を検討している方はもちろん、すでに「みんなで大家さん」に投資している方も、ぜひ最後までお読みいただき、今後の投資判断にお役立てください。 安易な高利回りにつられない、賢い投資家になるための第一歩を踏み出しましょう。
1. 「みんなで大家さん」集団提訴問題の核心
不動産ファンドの規模と構造リスク
「みんなで大家さん」は約3万8000人から計約2000億円を集めた大規模な不動産ファンドです。関与する人数も資金も莫大なため、一旦不具合が生じると、その影響は瞬く間に広がります。
「大規模な不動産ファンドであるほど、規模を維持するために新規投資を継続的に集める必要が出てきます。もし、新規投資の獲得が滞れば、既存投資家への配当支払いが難しくなり、結果的にファンド全体の運営が行き詰まる可能性があります」と小原氏は指摘します。
【みんなで大家さん】年利7%のカラクリ
「不動産投資で高リターンを得ようとすると、金融機関からの融資を利用してレバレッジをかけることが一般的です。しかし、投資家保護の観点から、今回の成田案件では借入を行っていないと推測されます。借入なしで、未稼働の開発案件で7%の利回りを継続的に分配するのは、現実的に考えて難しいでしょう」と小原氏は語ります。
年利7%の裏には無理がある構造だったと言えるでしょう。
さらに、小原氏は利益の出どころそのものにも疑問を投げかけます。「通常、不動産開発プロジェクトの利益が確定するのは、建物が完成し売却された時点です。それまでの間、収益がないにもかかわらず、高配当を出し続けることができたのは、新規の出資金を既存投資家への配当に充てる、いわゆる『タコ足配当』だったのではないかという疑念が残ります」と警鐘を鳴らします。このような構造は、持続可能性に欠け、いずれ破綻を招く可能性が高いと言えます。
2. 高配当の裏側:タコ足配当の疑念と不透明な資金の流れ
開発途中の高配当は要注意
不動産開発プロジェクトは、完成・売却まで収益が発生しないのが通常です。にもかかわらず、開発途中で高配当が支払われる場合、その原資がどこから来ているのかを注意深く確認する必要があります。
小原氏はタコ足配当の危険性について、次のように説明します。「新規の出資金を既存投資家への配当に回すことは、自転車操業のようなものです。一時的には高い配当を維持できますが、新規の出資金が集まらなくなると、すぐに破綻してしまいます。」
不動産投資クラウドファンディングを利用する際には、利益の源泉が明確かどうかを必ず確認しましょう。
グループ内賃料収入という名の不透明性
「みんなで大家さん」の配当原資は、グループ内の別会社からの賃料収入という形で説明されていました。しかし、小原氏は、この不透明な資金の流れに疑問を呈します。
「外部から稼いだお金ではなく、身内から身内へとお金が流れるという『内々』の構造では、グループ全体の資金繰りが悪化すれば、配当が同時にストップするのは当然です。今回の分配金遅延は、まさに内包されていたリスクが現実になっただけと言えるでしょう」と小原氏は指摘します。
3. プロジェクト進捗の乖離:8割完了 vs 2%の実態
(みんなで大家さん)会社側の説明と現実のギャップ
会社側は「造成工事(土地ならし)は8割完了した」とアピールしていましたが、小原氏によると、行政への報告書では、建物建設まで含めたプロジェクト全体の進捗率はわずか2%程度と記載されています。
「造成工事の完了は、開発プロジェクト全体から見れば初期のごく一部に過ぎません。会社側の説明と現実の乖離は、投資家を欺く行為とも言えるでしょう」と小原氏は批判します。 重要なことは、表向きの情報だけでなく、客観的なデータや第三者機関の評価などを参考に、多角的な視点から投資判断を下すことです。
大幅な遅延:2021年開業→2027年春予定
当初2021年開業予定だったプロジェクトは、すでに6年も遅延しており、2027年春の開業予定となっています。小原氏は、この遅延状況から、プロジェクト管理自体が成り立っていないのではないかとさえ疑念を抱いています。
「ここまで遅延が続くと、当初の計画自体が見直される可能性もあります。投資家は、常に最新の情報を収集し、状況の変化に対応していく必要があるでしょう。」
4. 迫るXデー:事業継続の危機と元本割れのリスク
資金繰りの逼迫:解約請求と資金調達難航
行政処分直後、会社には約28億円もの解約請求が殺到し、受付が一時停止されました。再開後も月5億円という上限が設けられ、処理に6カ月から12カ月以上かかるとされています。
小原氏は、現状を「お金を引き出せない『流動性リスク』が現実になった」と表現します。会社側は不動産売却や社債発行で資金を賄うとしていますが、その実現性は極めて低いと小原氏は見ています。
11月末のリミット:許可失効なら解散・清算
成田のプロジェクトに必要な開発許可と、空港会社との土地賃貸借契約の期限が、ともに11月末に到来すると見られています。小原氏は、もしこれらの更新がなされなければ、プロジェクトは物理的に継続不可能となり、事業の解散・清算へと進む可能性が高いと指摘します。
元本割れの可能性:「2000億円集めたから安心」は錯覚
資金調達も事業継続も不可能となった場合、投資家のお金はどうなるのでしょうか? 小原氏は「最悪のシナリオ」として、元本割れのリスクを指摘します。
「万策尽きた場合、事業は解散・清算となります。開発途中の土地や保有不動産をすべて売却し、残ったお金を投資家で分けることになりますが、解約が殺到している状況では、資産を急いで売却せざるを得ません。その結果、買い叩かれ、投資資金が大きく毀損する可能性があります。」
過去の不動産ファンド破綻事例では、解散後に債務超過が判明し、投資資金がほぼ戻らなかったケースもあります。
5. 不動産投資で失敗しないために:見るべきポイント
AUM(運用資産規模)の重要性
「2000億円集めた」という数字に安心せず、その裏付けとなるAUM(運用資産規模)を確認することが重要です。AUMとは、実際にどれだけの価値の資産を管理・運用しているかを示す指標であり、ファンドの安定性や収益性を判断する上で重要な情報となります。
小原氏は、「累計調達額(フロー)は、単なるこれまでに集まった入金額に過ぎません。AUM(ストック)こそが、ファンドの規模の質を表す重要な指標です。」と語ります。
透明性と利益の源泉の確認
運営会社の透明性と、利益の源泉を必ず確認しましょう。上場企業であれば、外部の監視が効きやすく、財務状況も把握しやすいですが、非上場会社の場合は、自分で徹底的に調べる必要があります。
小原氏は、利益の源泉が不明確な投資先は避けるべきだと指摘します。「まともな不動産投資なら、誰がテナント(不動産を借りている人)で、いくら賃料が入り、経費を引いていくら残るのかが明確なはずです。そのような仕組みが曖昧な時点で、リスクが高いと判断すべきでしょう。」
まとめ:「年利7%」の誘惑に惑わされず、賢い投資判断を
今回の「みんなで大家さん」の問題は、高利回りの裏に潜むリスクを軽視すると、大切な資産を失う可能性があることを改めて教えてくれました。「年利7%」という魅力的な数字に目を奪われがちですが、それ以上に重要なのは、ファンドの仕組みや運営会社の透明性、そして利益の源泉をしっかりと見極めることです。
「不動産投資クラウドファンディング自体は、小口から参加できる優れた仕組みですが、担う事業者が健全でなければ意味がありません。結局は、高利回りの裏に潜むリスクを自ら見抜くリテラシーを持つしかありません」と小原氏は語ります。
不動産投資を行う際には、以下の点を常に意識しましょう。
高利回りの裏には必ずリスクがある
運営会社の透明性を確認する
利益の源泉を明確にする
AUM(運用資産規模)を重視する
複数の情報を比較検討する
大切な資産を守れるのは、規制当局でも事業者でもなく、自分自身です。安易な誘惑に惑わされず、冷静な判断力で賢い投資家を目指しましょう。
コメント